中小企業のDXが進まない理由は、担当者の立場では決められないこと
DXを進めようと新しいソフトを契約し、担当を事務の方に任せて半年。事務の方の返事は今月も「まだ準備中です」で、請求書はこれまでと同じExcelで作られている。
そういう会社では、事務の方のノートの端に、次のような問いが答えの出ないまま残っていることがあります。
- 締め日が1社だけ違う取引先は、新しいソフトでどう扱うか
- 紙の点検票は、いつやめるか
- 現場の班長にも、入力を頼むか
3つとも、事務の方の立場では答えを出せない問いです。答えを出せるのは、社長です。
DXが進まない理由は、担当者の立場では決められないことが残っているから
中小企業のDXが、担当者とソフトを決めたあとで止まる理由の1つは、取引先との約束、ほかの人の仕事、頼みごとのように、担当者の立場では決められないことが、担当者の手元に残っていることです。進めるには、社長が担当者に「決まっていないこと」を書き出してもらい、そのうち社長が決める行に、答える日を書き込みます。
2026年9月に「中小企業 DX 進まない理由」で検索して上位の記事を見たところ、詳しい人がいない、予算がない、目的があいまい、社内の理解が進まない、の4つが並んでいました。どれも起こりうることです。ただ、担当者を決めてソフトも入れた会社で止まっているなら、私はこの4つより先に、担当者のノートの端を疑います。冒頭の3行のような問いは、詳しい人を入れても、予算をつけても、社長が答えるまで消えないからです。
担当者の手元には、3種類の「決まっていないこと」が残る
担当者の手元に残る行では、決める人が担当者より上の立場にいるか、社外にいます。冒頭の3行に当てはめると、次のようになります。
取引先との約束に関わる行。 締め日が1社だけ違う扱いは、会社がその取引先と交わした約束から来ています。新しいソフトで締め日をそろえるなら、会社から取引先へ変更を頼むことになり、頼むかどうかを事務の方は決められません。
ほかの人の仕事を変える行。 紙の点検票をやめれば、点検票に書き込んでいる現場の人の仕事も変わります。事務の方が「来月からやめます」と伝えても、現場の人から見れば、従う理由がありません。
ほかの人に頼みごとをする行。 班長に入力を頼めば、班長の手間が増えます。この頼みごとは、社長から班長にすることになります。
担当者は、やる気がなくてこれらの行を止めているわけではありません。決める立場に置かれていないだけです。そして、ソフトの設定も、答えの出ていない行の手前で止まります。締め日の扱いが決まらないうちは、担当者は請求の画面の締め日の欄を埋められません。
決まっていないことを書き出し、社長が答える日を決める
決まっていないことに答えを出すのは、社長の役目です。この進め方ができる前提は2つあります。担当者に、決まっていないことを書き出す時間が取れること。社長が、答える日を自分の予定に入れられることです。
社長は、担当者に書き出してもらう。 社長は担当者に、「〜をどうするか」の問いの形で、1行に1つずつ書いてもらいます。担当者が「こんなことまで社長に聞いていいのか」と迷う行も、社長は書いてもらうよう頼みます。迷った行を担当者が消すと、その行は次もノートの端に戻ってきます。
社長は、1行ずつ、自分が決めるか担当者に任せるかを書き込む。 任せる行は、社長がその場で担当者に「これはあなたが決めていい」と伝えます。任せると伝えるだけで、担当者の手元から消える行もあります。
社長は、自分が決める行に、答える日を書く。 取引先に確かめてからでないと答えられない行にも、社長は答える日を書きます。日の書いていない行は、担当者から見ると、いつまで待てばよいのかが分かりません。
私は、社内の判断者が決まっていない状態での丸投げのご依頼は、お引き受けしていません(サービスと進め方の「お引き受けしないもの」に書いています)。外から人が入っても、決める人がいなければ、担当者のノートの端と同じところで仕事が止まるからです。
答えを出しても進まない会社もある
社長が全部の行に答えても進まないときは、原因が「決まっていないこと」の外にあります。たとえば、社長が答えを出したあとも、事務の方がExcelと新しいソフトの両方に同じ数字を打ち続けている場合です。そのとき私は、ソフトの側が今の仕事の形とかみ合っていないことを疑います。
取引先との契約の中身によっては、社長にも答えを出せない行が残ります。契約書の読み方は、この記事の範囲の外に置きます。
よくある質問
Q. DXの担当者を替えれば進みますか。
決まっていないことが残ったままなら、次の担当者の手元にも同じ行が並びます。担当者を替える前に、社長が今の担当者に書き出してもらえば、止まっている理由が社長から見えます。
Q. 外部の会社にDXを頼めば進みますか。
外の会社に頼んでも、取引先に頼むか、紙の点検票をやめるか、の答えは社長が出します。相談先の種類ごとの得意と不得意は、中小企業のIT相談先がわからないに並べました。
Q. 答えを出したのに、社員が新しいソフトを使いません。
原因が、決まっていないことの外にあるかもしれません。kintoneをお使いなら、作り直すかどうかの見きわめ方をkintone導入に失敗したと感じたらに書きました。どの仕事から手をつけ直すかの選び方は、中小企業のDXの進め方にあります。
明日やること
社長から担当者に、「いま決まっていないことを、『〜をどうするか』の形で紙に書いて、明日の夕方に持ってきてほしい」と頼んでください。紙を受け取ったら、社長は行ごとに、自分が決めるか担当者に任せるかを書き込み、自分が決める行には答える日を書き添えます。
答える日を書いても、どう答えればよいか社長自身が決めきれない行が残るときは、無料のご相談をお使いください。その行が関わる仕事の受け渡しをお聞きして、最初に直す候補とその理由を口頭でお伝えします。行の答えそのものを、私が社長の代わりに決めることはしません。その場で契約をお勧めすることはありません。
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