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中小企業のIT相談先の選び方|見積が高いのは会社が小さいからではない

・SanSaQ代表

よくうかがうのは、こういう場面です。

月末になると、経理の担当者が同じことを聞きに来る。「この案件、請求上げていいんでしたっけ」。台帳はExcel、原本は紙のファイル、答えを知っているのは営業のあの人だけ。

以前、知り合いに紹介されたIT会社に何度か来てもらったけれど、出てきたのは基幹システムの入れ替え提案と、見たことのない桁の見積書だった。「うちの規模だと、こういう話になっちゃうんですね」と言ったら、担当者は少し困った顔をして帰り、それきり連絡は来ていない。

この記事では、そこで何が起きているのかを、見積を作る側の内訳の話として書きます。

その見積書が高いのは、あなたの会社が小さいからではない

先に結論を書きます。相談するたびに提案が「作り替え」になり、金額が桁で合わないのは、会社の準備不足でもITリテラシーの問題でもありません。支援する側の見積の作り方が、そういう形になっているだけです。

この記事で手に入るものは3つです。

  1. なぜ提案が大きくなるのか、その内訳
  2. お金を払わずに済む範囲(先に全部使ってください)
  3. 相談先を4つに分けて選ぶ判断表

道具と売り方が20人規模の会社に合っていないだけで、困っている側に問題があるわけではない、というところから始めます。

小さい依頼ほど、数字が合わなくなる

受託の見積は、かかる時間に単価を掛けて出すのが基本形です。分かりやすく、双方が納得しやすい。問題は、依頼が小さくなっても消えない作業があることです。

依頼が10分の1になっても、これらは10分の1になりません。ヒアリングは同じだけ必要ですし、引き渡しの説明も同じだけかかります。

すると何が起きるか。小さい依頼ほど、この「消えない作業」の比率が上がって、時間あたりで見たときに合わなくなります。そこで無意識に起きるのが、範囲を広げて数字を合わせるという調整です。せっかく行くなら他も見ましょう、どうせなら全体を整理しましょう、と。

悪意ではありません。組み立て方の帰結です。そうやって、小さく直したいという要望から、基幹刷新の提案書ができあがります。

私はこの出し方をしていません。時間ではなく、何を納品するか・どこまで責任を持つか・どれくらいの頻度で入るかで決めています(後ろでもう一度書きます)。時間を掛け算していないので、小さい依頼でも範囲を広げる理由がありません。その代わり「今回はここまで」と線を引きます。

距離が原価に乗る——地方だと、さらに来ない

訪問前提の契約だと、片道2時間の会社は1回の打ち合わせで半日が消えます。同じ金額の契約でも、都市部の会社と地方の会社では、支援する側に残る時間が変わります。

結果として「行くほどの案件ではない」という判定が起きやすくなる。地方の会社に相談先が来ないのは、多くの場合これです。

私自身は福岡を拠点に、県外の会社を複数、継続で支援しています。距離を越えた継続関与は、契約の組み方しだいで成立します。訪問を前提にせず、オンラインで回る範囲を先に決めておけば、片道2時間は原価から消えます。

「公式パートナーから選ぶ」が、20人の会社だと効きにくい理由

制度そのものが悪いという話ではなく、向き不向きの話として書きます。

ツールベンダーの認定パートナー一覧は、販売網として整備されたもので、相談先の名簿として作られたわけではありません。掲載には一定の実績や体制が必要になるため、そこに並ぶのは、20人の会社の小さな困りごと単体では数字が合いにくい規模の会社になりやすい。

だから、よくある選び方記事の「まず認定パートナーから」に素直に従うと、ミスマッチが起きることがあります。パートナー会社が悪いのではなく、依頼の規模と相手の体制が噛み合っていないだけです。

先に、お金を払わずに済む範囲を全部使う

有償の支援を仕事にしている立場で書きますが、先に無料で解ける範囲を全部使ってください。 そこで解けるなら、払う必要はありません。

製品公式の窓口とユーザーコミュニティ。 kintoneならヘルプと、ユーザー同士が相談できる「キンコミ」があります。設定・操作・「これはできるのか」といった問いは、ここで解けることが多い。実際、キンコミには同じ規模の会社の担当者が実名で答えていて、ベンダーより実務に近い回答が返ってくることもあります。

公的窓口。 よろず支援拠点、中小機構のIT経営サポートセンター、商工会議所・商工会。無料で何度でも相談できる代わりに、方向づけや制度案内が中心で、手を動かして作る部分は原則つきません。「何から考えればいいか」の整理には向いています。

同業・知り合いの会社。 同じ業種で同じ規模の会社が何を使っているかは、どんな比較記事より参考になります。業種特有の帳票や商習慣は、そこにしか情報がありません。

お金を払う境界はどこか

無料の窓口では届かなくなる線があります。次の3つのどれかに当てはまったら、有償を検討する段階です。

業務が2つ以上のシステムか部署をまたぐとき。 FAXで受けた注文をExcelに写し、別のシステムに入れ直し、そこから帳票を出す——こういう流れは、どれか1つのツールの使い方を覚えても解けません。つなぎ方を設計する必要があります。

例外の判断基準を誰かが決めないと止まるとき。 この取引先だけ締め日が違う、この案件は請求を保留する。手順書に書かれていないルールが人の頭の中にある状態は、ツールでは解けません。決める作業が要ります。

決めたことを運用に定着させる人が社内にいないとき。 作るところまでは外注できても、使われる状態にするには、社内の業務の流れを変える必要があります。ここに伴走が要るかどうかが、単発で足りるか継続が要るかの分かれ目です。

相談先を4つに分けて選ぶ

得意なこと契約の形金額が動く要因向かない依頼
大手SIer・コンサル大規模な基幹刷新、全社の制度設計プロジェクト単位関わる人数と期間数十万円規模の部分改善
地場のシステム会社ハード・回線・既存システムの保守、緊急対応保守月額+都度訪問頻度、対象機器業務そのものの設計変更
ツール専業パートナーそのツールの実装力、機能の使い倒し構築+保守アプリ数、カスタマイズ量ツールの外側の業務整理
個人・小規模事業者業務整理から実装まで一体、小回り単発設計+月額成果物と責任の範囲、関与の深さ大規模開発、24時間対応、常駐

価格帯の列は置きませんでした。調べた時点で古くなる数字を表に固定すると、あとで誰かを誤らせるからです。

選ぶときの順番としては、既存の付き合いがあるベンダーが得意な領域(ハード・回線・既存システム)は、まずそこに聞くのが早いです。そこで「うちの守備範囲ではない」と言われた部分が、外に相談すべき範囲になります。

私の値付けと、私に頼まないほうがいい場合

自分の値付けも開いておきます。

金額が動く要因は3つです。成果物の範囲(何を納品するか)、責任の範囲(どこまで面倒を見るか)、関与の深さ(どれくらいの頻度で入るか)。この3つが決まらないと見積は出せませんし、逆にこの3つが決まれば、たいていの見積は比較できる形になります。

価格は作業時間の対価ではなく、失敗しない判断基準と、残り続ける仕組みへの対価だと考えています。同時に深く関われる数には限りがあるので、安く広く引き受けることはしていません。安く受けると関与が薄くなり、成果が出ないまま費用だけが残る。それを知っていて安く受けるのは、誠実ではないと思っています。

私に頼まないほうがいい場合も書いておきます。

明日やる3つのこと

1. 困りごとをA4一枚に書き出す。 列は4つだけです。誰の / どの業務の / 月に何分かかっているか / いま誰が答えを知っているか。何を頼めばいいか分からないのは、この一枚がないからです。相手が誰であれ、この一枚があると話が早くなります。

2. その一枚を持って、まず無料の窓口に行く。 公式のヘルプ、コミュニティ、よろず支援拠点。ここで解けるなら、払わなくて済みます。

3. 有償に進むなら、いきなり全部を発注しない。 最初は設計だけを小さく買って、出てきた設計図を持って複数社に当たれる状態を作る。設計と実装を同じ会社に一括で頼むと、その見積が妥当かどうかを比べる相手がいなくなります。

3番目がいちばん大事です。設計図が手元にあれば、次からは自分で選べるようになります。


自社の困りごとが、無料で解ける範囲なのか、設計が要る段階なのか。その切り分けだけでも、30分の相談でお答えできます。判断がついたあと、私に頼まないという結論でも構いません。

まずは無料でご相談

初回は30分ほど、ビデオ通話かお電話で。資料の添付は不要です。3営業日以内にメールでご返信します。

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