kintone導入の失敗から立て直す|作り直す・やめる前に確認する5つ
kintoneの利用料は毎月出ていくのに、現場はまだExcelと紙で仕事をしている。作り直しの見積を取るか、いっそやめるか。その判断の前に、確かめてほしいことがあります。
「kintone 導入 失敗」で検索すると、導入前に読むべき注意点の記事がたくさん出てきます。目的を明確に、現場の声を聞いて、スモールスタートで——どれも正しい。ただ、検索結果を上から見ていくと、もう導入したあとの人の声が混じっています。
2026年9月に調べたときは、1位と6位が、サイボウズ公式のユーザーコミュニティに投稿された相談でした。「【失敗したこと】を聞きたいです」「社内で使ってくれなくて困っています」。解説記事より、同じ状況の人の声が求められている。それが検索結果の形に出ています。
この記事は、導入前の心得ではなく、すでに「失敗した」と感じている状態から立て直す手順を書きます。最後に、それでも合わない場合にkintoneをやめる・使う範囲を狭める判断基準も正直に書きます。
まず、「失敗した」の中身を3つに切り分ける
「kintone導入に失敗した」という言葉は、実際には性質の違う3つの状態を指しています。原因が違えば打ち手も違うので、ここを混ぜたまま対策を考えると、的を外しやすくなります。
1. 使われていない。 アプリは作ったのに、現場は相変わらずExcelと紙で仕事をしている。入力されないのでデータも溜まらない。
2. 前より手間が増えた。 kintoneには入力する。でもExcelの台帳も更新している。二重入力になっていて、導入前より作業が増えた。
3. 作った人しか分からない。 動いてはいるが、どのアプリが何とつながっているかを説明できるのが1人だけ。その人が異動・退職したら誰も触れない。
3つとも「失敗」と呼ばれますが、1は現場の使い勝手、2は仕事の流れの設計、3は運用する体制の問題です。どれに当てはまるのか(複数当てはまることもあります)を先に決めてください。この記事の以降の内容も、どこから読むべきかが変わります。
作り直す前に確認する5つのこと
失敗したと感じた会社が最初に考えやすいのが、「アプリを一から作り直す」ことです。私は、これをおすすめしていません。「いきなり作り替えない」は、SanSaQのお約束の1つ目にも置いています。
理由は、現場が不完全なりに今のkintoneで毎日仕事をしているからです。作り替えは、業務を止めるリスクと、覚え直しの負担を現場に負わせます。しかも、原因がアプリの出来ではなく業務との噛み合わせにあるなら、作り直しても同じ理由で使われません。
作り直しの見積もりを取る前に、次の5つを確認してください。
1. 「目的」ではなく「1日の動線」から見直す
kintone導入の失敗の原因として、よく「導入の目的が曖昧だった」と書かれます。間違ってはいませんが、この反省をしても現場は何も変わりません。目的を書き直したところで、明日の作業は同じだからです。
見るべきなのは、現場の担当者が1日のうちに何回、何のためにkintoneを開くかです。
朝、仕事を始める前に今日の予定を確認する。電話を受けて過去の履歴を探す。夕方に進捗を更新する。この3つが1日に何度も起きるなら、そこがkintoneの本当の使いどころです。逆に、月1回の集計のために毎日の入力を現場に強いている設計になっていたら、それは失敗して当然の構造です。
現場に「使ってください」と言う前に、現場が使いたくなる場面が1日のなかにあるかを確認する。ここが立て直しの起点です。
2. 入力項目を減らせないか確認する
「あとで分析に使うかもしれない」項目を詰め込んだ入力画面は、現場にとって毎日の負担です。入力に迷いが生まれると空欄と我流のメモ書きが増え、データの信頼性が下がり、「どうせ正確じゃないから見ない」という悪循環に入ります。
必須項目を業務が回る最小限まで削ってください。分析用の項目は、実際に分析を始めるときに足せば間に合います。迷いやすい入力欄は、選択肢化や初期値設定で「考えなくていい状態」を作ります。
項目を減らすのは、機能を足すより地味です。それでも毎日の入力が軽くなるので、現場が変化に気づきやすい直し方です。
3. Excelとの二重入力が残っていないか確認する
二重入力は、現場の不満が溜まりやすい形です。「新しい仕組みを入れたのに仕事が増えた」という感覚は、この状態から生まれます。
二重入力が残るときは、まず出口を見てください。kintoneに入力しても、そこから見積書や請求書、取引先指定の帳票が出せない。だから結局Excelで作り直す。作り直すなら最初からExcelでいい、となって入力が形骸化します。
このとき直すのは、kintoneの入力側ではなく帳票側です。PrintCreatorのような帳票サービスをつなげば、レコードの画面から所定の様式を出せるようになります。取引先ごとに指定様式がある場合、無理に1つの汎用帳票へまとめず、頻度の高い取引先の様式から個別に作るほうが早くて安全です。
4. アプリを増やす前に、一覧を増やす
「あの業務もkintoneでやろう」とアプリを増やしていくと、どこに何があるか分からないアプリの群れができあがります。管理が行き届かなくなり、使われないアプリが残り、それ自体が「失敗した感」の原因になります。
新しいアプリを作る前に、今あるアプリの一覧画面を、部署ごと・目的ごとに用意してください。アプリの数を増やさずに、探す手間を減らせます。
- よく使う絞り込み条件は、その部署向けの一覧として保存しておく
- 顧客名で探す業務が多いなら、五十音の行で絞り込める検索を付ける(kintoneには最初から用意されていないため、作り込みで付けます)
- 明細テーブルを確認する頻度が高いなら、一覧上で展開表示できるようにする
現場がkintoneを見限る典型パターンは「知りたいことを知るまでのクリック数が多い」ことです。案件の納期を確認するのにレコードを1件ずつ開く必要があるなら、印刷した一覧表のほうが速い。そう判断されて終わります。
5. 仕様を知っている人が1人になっていないか
3つ目の失敗パターン、属人化です。動いているうちは問題が表面化しないため、放置されやすい。しかし担当者が抜けた瞬間に「誰も触れない仕組み」が残り、そこで初めて失敗として認識されます。
完璧な資料は要りません。最低限、次の3つが書き出してあれば、引き継ぎはかなり楽になります。
- どのアプリが、どの業務のどの工程で使われているか
- アプリ間がどうつながっているか(ルックアップ、関連レコード、連携サービス)
- 動かしてはいけない設定と、その理由
3つ目が意外と大事です。「なぜこの設定なのか」が残っていないと、次の担当者が善意で壊します。
それでも合わないとき——やめる・範囲を狭める判断基準
ここまでは立て直しの話でしたが、正直に書きます。kintoneが向いていない業務は実際にあります。
この検索で上位に出てくる解説記事の多くは、kintoneの導入支援や関連サービス、ソフトの開発を手がける会社のものです。私も支援をする側です。それでも、支援を入れても解決しにくい業務があることは、はっきり書いておきます。
次のいずれかに当てはまるなら、kintoneで無理に作り込むより、専用ソフトを使うか、その業務だけkintoneの外に出すことを検討してください。
法令要件が厳しく、頻繁に改正される業務。 会計、給与計算、年末調整など。制度改正のたびに自社で改修を追いかけることになります。専用ソフトが対応してくれる領域を、わざわざ自前で抱える理由はありません。
複数アプリをまたぐ複雑な集計・原価計算が中心の業務。 kintoneの集計は1つのアプリを単位とするのが基本です。アプリをまたいだ多段の計算が業務の中心にあるなら、連携サービスやプラグインを重ねることになり、構成が複雑になっていきます。
複数人が同じ数字を同時に書き換える業務。 在庫の引き当てやレジ処理のように、複数人が同じ在庫数を同時に取り合う処理は苦手です。kintoneでは、同じレコードを同時に編集すると、後から保存した人がエラーになり、入力し直しになります。
大量データを長期に蓄積し、高速検索が要る業務。 レコード件数が増えると、一覧の表示や絞り込みに時間がかかるようになることがあります。何年分をkintone上に持ち続けるのかを、設計時に決めておく必要があります。
大事なのは、これらに当てはまってもkintone全体をやめる必要はないということです。合わない業務だけを外に出し、kintoneは案件管理や情報共有など得意な領域に絞る。これが現実的な落としどころです。全部やめると、データの移し替えと覚え直しがもう一度発生します。やめる前に、合わない業務だけを外に出せないかを先に見てください。
立て直しの進め方
実際の支援では、この順番で進めています。かかる期間は案件によって変わるので、順番だけ書きます。
1. 現場が「結局Excelでやり直している作業」を探す。 Excelでやり直している作業は、現場が毎日わざわざ手間をかけている場所です。ここを直すと、変化が現場に伝わりやすくなります。担当者に「kintoneのどこが使いにくいですか」と聞いても、答えはなかなか出てきません。私は、実際の案件を1件選んで、最初から最後までの流れを担当の方に見せていただきます。
2. 一覧・入力・帳票のどれが原因かを切り分ける。 ここまで来ると、作り直しが要るかどうかの見当がつきます。3か所それぞれの見つけ方と直し方は、kintoneが現場で使われないとき、最初に直す3か所に書きました。
3. 1日に何度も起きる操作から直す。 効果が毎日積み上がるからです。月1回の集計画面を先に直しても、現場の実感は変わりません。
ここまでで、現場から「前より少し楽になった」という反応が出れば、立て直しは軌道に乗ります。逆に反応がなければ、直した場所が現場の動線から外れています。作り込みを進める前に、選ぶ場所を見直してください。
よくある質問
Q. kintoneをやめた会社には、どんな理由がありますか。
機能が足りないことより、「入力の手間に対して、現場が受け取る見返りが小さい」状態が続くことのほうが、やめる理由になりやすいと私は見ています。入力する人と、データを見て得をする人が別(現場が入力し、管理者だけが集計を見る)という形になっていると、現場の側に使う理由が生まれません。
Q. kintoneが「使えない」と言われるのはなぜですか。
プログラムを書かずに誰でも作れることの裏返しで、仕事の流れを決めないまま画面だけ作れてしまうためです。Excelの帳票をそのままkintoneに写そうとすると、かえって使いにくくなります。道具の問題というより、作り方の問題です。
Q. kintoneでできないことは何ですか。
標準の機能では、アプリをまたいだ複雑な集計、レイアウトの決まった帳票の出力、同じデータを複数人が同時に書き換える処理などが苦手です。一部はプラグインや連携サービスで補えますが、補うほど費用と構成の複雑さが増えます。「補ってでもkintoneでやる価値があるか」を、そのつど判断してください。
Q. 導入支援や伴走支援は必ず必要ですか。
必須ではありません。社内に業務の全体像を説明できる人がいて、その人が改善に時間を割ける状態なら、自社で進められます。外部の支援が効くのは、「現場の話を聞いて、仕事の流れに置き換えて整理する人」が社内にいない場合です。逆に言えば、支援を入れても現場の協力が得られない状態では、誰がやっても定着しません。相談先の選び方は、中小企業のIT相談先がわからないに書きました。
Q. 立て直しにはどれくらいかかりますか。
期間は会社ごとに変わるので、この記事では決めていません。見るのは期間より、最初に直した操作について、現場の反応が変わったかどうかです。一気に理想形を目指すと、また同じ失敗を繰り返します。
明日やること
担当の方と、kintoneに入力してから書類を出すまでを、案件1件分だけ通してみてください。途中でExcelや紙に手が戻った場所に、印を付けます。作り直すか、やめるかは、その印を見てから決めても遅くありません。
どのパターンに当たるのか切り分けたい場合は、無料のご相談で実際の画面を拝見しながら、最初に直す場所を一緒に決めます。作り直しが要らないと判断できれば、そのこともはっきりお伝えします。その場で契約をお勧めすることはありません。
初回は30分ほど、ビデオ通話かお電話で。資料の添付は不要です。3営業日以内にメールでご返信します。