経理の外注はどこまでできる?外に出せる作業と、社内に残る3つ
経理の担当者が辞めることになった会社や、経理を一人に任せている「一人経理」の会社では、今のやり方のまま経理を外注できるのかが、社長には見えません。請求書の控えも、通帳も、現場の領収書も、担当者の手を通っているからです。
「経理 外注」の検索で上位に出る10件(2026年9月29日に調べたもの)のうち2件は、頼む範囲や出す書類を先に整理しておくよう、見出しで勧めています。私は、その整理を「何を・いつ・誰が・どこに」の4つの欄で進め、置き場所と届く日と運ぶ人を社長が決めるところまでを書きます。外注先の比べ方と料金には触れません。
経理の外注は、どこまでできる?
記帳(会計ソフトへの入力)や給与計算のような作業は外に出せますが、紙とデータの届け方を決めることと、その場の判断、外注先への答えは、社内に残ります。
作業のほうは、紙とデータが届けば、社外の人でも進められます。一方で、次の3つは、外注しても社長か社内の誰かが受け持ちます。
- 紙とデータを、誰が・いつ・どこへ届けるかを決めること
- その場で決めていること(立て替えの領収書を、どの現場の費用にするか。仕入先の請求書どおりに支払ってよいか)
- 外注先からの問い合わせに答えること
仕入先の請求書なら、受け取るところから代わりに引き受けるサービスもあります(2026年9月時点)。それでも、現場で立て替えた領収書を班長がいつ・どこへ出すかは、社長が決めて班長に伝えます。
一人経理の会社では、この3つも担当者の手元に集まりがちです。担当者がそのまま辞めれば、作業は外に出せても、3つを受け持つ人が社内に残りません。
なお、外に頼むなら、税金の申告書を作ることや、税金の計算の相談にのることは、原則として税理士か税理士法人に頼む仕事です(税理士法の第2条と第52条)。
引き継ぎ後に、後任が仕事ができないのはなぜ?
手順は引き継いでいても、仕事に使う紙とデータが、いつ・誰から・どこに届くかを引き継いでいないと、後任は材料をそろえる段で止まるからです。
手順書に書くのは、机の上で手を動かす順番と、迷った場面での決め方です。担当者が話しながら作業すれば、手を動かす順番は録音から拾えます(担当者の話を録音して手順書にする進め方は、手順書をAIで作る記事にあります)。けれども、班長が領収書を持ってくる日や、持ってこない班長に担当者が電話で催促する場面は、作業の日より前に起きるので、作業の録音には入りません。
外注先も、この点では後任と同じです。後任なら担当者の机を開けて探せますが、社外の外注先には、事務所の机の中は見えません。社長が紙とデータの届き方を、手順とは別に決めておくのは、そのためです。
社長が、渡す紙とデータを4つの欄に書き出す
社長が表を書き、どの欄を決め直すかも社長が決めます。担当者は、社長の問いに答えながら、紙とデータを1つずつ挙げます。始めるのは、担当者がまだ社内にいて、先月分の紙とデータが手元に残っているうちです。
- 社長が、外に出したい経理の仕事を1つ選びます。どの仕事が担当者一人に偏っているかの見つけ方は、経理の属人化はどこから解消する?に書きました。
- 先月その仕事で手にした紙とデータを、担当者が順に挙げます。社長は、同じ種類の紙やデータを1行にまとめて書き出します。
- 社長は、1行ごとに、担当者に聞きながら4つの欄を埋めます。「何を」は紙やデータの名前、「いつ」は毎月いつまでにそろうか、「誰が」は誰が用意して置き場所まで運ぶか、「どこに」は今どこに置いてあるか、です。
- 社長は、次の2つに当たる欄を赤で囲みます。担当者の名前か持ち物(机・受信箱・パソコン)が書いてある欄と、「いつ」の日が決まっていない欄です。担当者が辞めた次の月から、どちらの欄も、書いたとおりには紙とデータが届かなくなります。
- 赤で囲んだ欄ごとに、社長が「いつ・誰が・どこに置くか」を決め、担当者の名前や持ち物を、ほかの人の名前か、決めた置き場所に書き換えます。
下の表は、架空の設備工事の会社で、会計ソフトへの入力(記帳)に先月使った紙とデータを書き出した例です(会社も中身も作りものです)。赤で囲んだ欄は、太字にしています。
| 何を | いつ | 誰が | どこに |
|---|---|---|---|
| 現場で立て替えた分の領収書 | 決まっていない(班長が事務所に寄ったとき) | 班長が担当者に手渡す | 担当者の机の引き出し |
| 仕入先の請求書(郵便) | 翌月の初めまで | 仕入先が担当者あてに送る | 担当者の机の上の箱 |
| 仕入先の請求書(メール) | 翌月の初めまで | 仕入先が担当者のメールに送る | 担当者の受信箱 |
| 通帳の入出金 | 翌月の初め | 担当者が銀行で通帳に印字する | 事務所の金庫 |
| 取引先へ出した請求書の控え | 月末 | 担当者がExcelで作る | 担当者のパソコン |
「いつ」「誰が」「どこに」の15の欄のうち、赤で囲んだのは10の欄です。「誰が」の欄には、5行とも担当者が出てきます。
社長は、赤で囲んだ欄を1つずつ書き換えます。たとえば1行目の領収書なら、「いつ」を「毎月の締めの前の日まで」、「誰が」を「班長が自分で運ぶ」、「どこに」を「事務所の入口に置いた箱」と決めます。担当者の受信箱のように、ふだん担当者本人しか開かない場所は、社長が、ほかの人も開ける置き場所に替えます。
経理の引き継ぎ期間は、どのくらい?
担当者の在籍中に、月末の締めが少なくとも1回入る長さが要ります。手順書の記事の進め方で後任に引き継ぐなら、月末は2回要ります。
1回目の月末に、社長は担当者に聞かずに、書き換えた表の置き場所から、その月の紙とデータをそろえてみます。決めた日までにそろわなかった行は、担当者がまだいるので、社長がその日のうちに聞いて書き直せます。2回というのは、手順書の記事に書いた、録音する回と、後任がやってみる回です。
退職の日が決まっていて、引き継ぎが間に合うかが気になるなら、辞める日と次の月末の締めの日を並べてみてください。締めの日のほうが先に来れば、その月末が、担当者と一緒に表を確かめられる回になります。
決算や年末調整の紙とデータは、先月の表の外にある
決算や年末調整のように年に一度だけ来る仕事の紙とデータは、その月をたどらない限り、表に出てきません。月末に1回確かめる進め方も、年に一度の仕事には当てはめられません。4つの欄の表で外注の準備ができるのは、月ごとに回る仕事の分までです。
よくある質問
Q. 引き継ぎ書はエクセルで作成できますか。
作れます。4つの欄の表なら、Excelのシートに、紙とデータを種類ごとに1行ずつ書けば足ります。保存するのは、社長も開ける共有の場所です。担当者のパソコンに置くと、表そのものが、赤で囲む欄と同じ置き方になってしまいます。
Q. 経理以外の事務を外注するときも、4つの欄は使えますか。
紙やデータを受け取って進める事務なら、使えます。たとえば受注の入力を外に出すなら、「何を」の欄には注文書や注文のメールが、「誰が」の欄には取引先や営業の方が入ります。
明日やること
社長は明日、外注に回したい仕事を1つ決め、先月その仕事で使った紙とデータを全部、担当者に机の上へ出してもらってください。出てきた物は、社長が種類ごとに分け、4つの欄の「何を」に1行ずつ書き写します。受信箱やパソコンの中にあって机に出せないものは、担当者に名前を聞いて、社長が同じ表に書き足します。
4つの欄をどの仕事から埋めるか決めかねたら、月末の経理の仕事が誰から誰へどう渡っているかを、私が無料のご相談で伺います。私は、先に決め直すとよい紙とデータを1つ挙げ、その理由とともに、その場でお伝えします。通帳や請求書の写しがなくても、ご相談は進められます。記帳や申告のような経理の作業そのものと、税金のご相談は、SanSaQではお引き受けせず、紙とデータの流れを直すところまでをお手伝いします。その場で契約をお勧めすることはありません。
初回は30分ほど、ビデオ通話かお電話で。資料の添付は不要です。3営業日以内にメールでご返信します。