エクセルの原価管理表は「発注した日」に書く|儲けを月末より前に知る
事務の方が月末に届いた請求書を原価の表へ写し終えて、社長は、先月終わった工事が赤字だったと知ります。案件ごとの儲けが月末まで分からないとき、社長が最初に見直すのは、原価の表に行を足す日です。
2026年9月29日に「原価管理 エクセル」と打って調べると、上から10件のうち8件が、原価管理や業務のソフトを扱う会社のページでした。この記事では、ソフトどうしを比べずに、エクセルの原価管理表のままで案件ごとの儲けを月末より前に知る方法と、エクセルの表では追いつかなくなる合図を書きます。
エクセルで原価管理表は作れますか
作れます。案件ごとに、受注した金額と原価を並べれば、案件ごとの粗利はエクセルで出せます。
原価は、その案件のために使うお金です。材料、外注、自社の職人の手間、重機や道具の借り賃などが入ります。粗利は、受注した金額から、その案件の原価を引いた残りです。
決算書の損益計算書に出てくるのは、会社全体の儲けです。案件ごとの儲けを振り返るには、1件ずつ受注金額と原価を横に並べた表が要ります。エクセルでは、表を2枚に分けて作ります。
| 表(1行に書くもの) | 主な列 |
|---|---|
| 案件の表(案件1件) | 案件番号、案件名、受注金額、予定の原価(実行予算)、原価の合計 |
| 原価の表(発注1件) | 日付、案件番号、中身(材料・外注・借り賃など)、相手先、金額 |
2枚は、受注したときに振る案件番号でつなぎます。原価の表の行にも案件番号を書いておけば、案件の表の「原価の合計」の欄に、エクセルのSUMIF関数を使えます。SUMIF関数は、指定した条件に合う行の数字だけを合計する関数です。条件に案件番号を指定すると、原価の表から、その案件の行の金額だけを足した合計が出ます。番号で表をつなぐやり方は、請求の漏れを番号で拾うkintoneの記事でも使っています。
ただ、この2枚がそろっていても、冒頭の場面は起きます。原価の表の日付が請求書の日付で、行が増えるのが請求書の届く日だからです。請求書がそろう月末までは、案件の表の原価の合計が、実際にかかる額に届きません。
原価管理で大切なことは何ですか
原価を、発注した日に書くことです。材料や外注にいくらかかるかの見当は、発注した日につきます。帳簿に載せる日とは別に、原価の表には発注した日に書き、請求書は、その金額の答え合わせに使います。
発注した日に書く、と会社の決まりにするのは社長の役目です。前提として、案件ごとに案件番号が振られていて、案件の表に予定の原価が書いてあることが要ります。予定の原価の欄に書くのは、次の節で説明する実行予算のうち、発注して払う材料・外注・借り賃の分を足した額です。自社の職人の手間は、発注が無く、原価の表に行が立たないので、予定の原価にも入れません。
決まりができたら、事務の方と工事の担当者は、次の3つを始めます。
- 日付の列を、発注した日に替える: 事務の方が、原価の表の日付の列を「発注した日」にし、その隣に「状態」の列を1つ足します。状態の欄には、「頼んだ」か「請求書で確かめた」を書きます。
- 発注したその日のうちに1行書く: 工事の担当者は、材料や外注を頼んだら、その日のうちに、案件番号・相手先・中身・金額の4つを事務の方へ伝えます。事務の方は原価の表に1行書き、状態を「頼んだ」にします。注文書を出していれば、その金額を書きます。金額がまだ決まっていない発注は、工事の担当者が見込んだ金額を書きます。
- 請求書が届いたら、同じ行と照らす: 事務の方は、月末に請求書が届いたら、新しい行を足さずに、明細1行ずつ、発注した日の行を探して金額を照らします。違っていれば請求書の金額に直し、状態を「請求書で確かめた」にします。
こうしておくと、月末は、原価を初めて知る日ではなく、先に書いておいた金額を確かめる日になります。この決まりのもとでは、工事の担当者が途中で材料を追加で頼むと、事務の方がその日のうちに1行を書き足すので、原価の合計も同じ日に増えます。
月末に届いた請求書の明細には、原価の表を探しても行が無いものが混じることがあります。工事の担当者が、発注した日に伝え忘れた発注です。事務の方は、その明細の分の行を足し、工事の担当者に発注した日を聞いて書き込みます。伝え忘れの行が月末にいくつあったかは、決まりが回っているかを見る目安にもなります。
実行予算と原価管理の違いは何ですか
実行予算は、工事を始める前に決める原価の予定で、原価管理は、その予定と実際の原価を、工事の途中から比べ続けることです。
実行予算は、受注したあとに、その工事の原価をいくらまでに収めるかを、材料・外注・手間などの中身ごとに決めた予定です。見積のときに積み上げた原価が、お客さまに出す金額を決めるための数字なのに対して、実行予算は、工事を任された人が社内で守る数字です。
予定の原価から原価の合計を引くと、予定のうち、まだ発注していない額が出ます。この額を、ここでは予定の残りと呼びます。工事の担当者は、残っている工事の材料や外注が、予定の残りで足りるかを見ます。足りなければ、その工事の粗利は、予定の原価で見込んだ額に届きません。社長は、予定の残りでは足りないと工事の担当者が言った案件から、月末を待たずに話を聞けます。
私は、予定の原価と、ここまでに使った原価を案件ごとに並べ、月末を待たずに、工事が終わったときの儲けの見込みを出す画面を、架空の設備工事会社で作りました。案件ごとの原価と儲けの見本です。画面には、工事の進み具合と、予定の原価を使った割合が並び、赤字に向かう案件から順に出ます(会社名も数字も作りものです)。
エクセルの表も、見本の画面も、並べるのは数字と見込みまでです。赤字かどうかは、残りの工事を知っている工事の担当者の見立てを聞いたうえで、社長が見極めます。表に判断を任せない、という線引きは、SanSaQの約束の中にも書いています。
エクセルの表では追いつかなくなるのは、どんなときですか
発注する人が増えたときと、同じ請求書を2か所に打つ手間で締めが遅れるようになったときと、自社の職人の手間を案件ごとに入れたくなったときの3つです。
- 発注する人: 工事の担当者が複数いて、それぞれが現場から発注すると、事務の方へ伝わらないままの発注が混じりやすくなります。月末に、原価の表に行の無い明細が並ぶようになったら、決まりが、伝える手間のところで止まっています。
- 二度打ち: 事務の方が、請求書の金額を、原価の表と会計ソフトの両方に打っていて、その手間のせいで締めの日が後ろへずれていく状態です。
- 職人の手間: 案件ごとの儲けに、自社の職人の手間まで入れたくなったときです。日報から案件ごとの人数と日数を拾って原価に足すには、発注の日に書くやり方とは別の拾い方が要ります。
3つのどれかが出たあとで、表を組み直すのか、ソフトに移すのかは、発注する人の数や日報の形で答えが分かれるので、この節では決めずにおきます。
よくある質問
Q. 建設業の原価管理は、エクセルでできますか。
はい。工事を1件ずつ番号で分け、番号ごとに材料・外注・借り賃を足していけば、工事ごとの原価の合計を、受注金額と並べて見られます。工事の途中で儲けを見たいときは、上で書いた3つの手順(発注したその日に1行書く決まり)を合わせて使います。
Q. 原価管理表のひな形(テンプレート)はありますか。
無料で配られているエクセルのひな形が、検索で見つかります。使う前に、日付の列が、発注した日を書く列か、請求書の日付を書く列かを確かめます。請求書の日付を書く形なら、発注した日の列と、状態の列を足してから使います。
Q. 採算管理と原価管理は、どう違いますか。
採算は、その案件で儲けが出るかどうかのことです。採算管理では受注金額と原価の両方を案件ごとに見て、儲けが出るかを追います。原価管理が見るのは、そのうち原価の側で、予定とのずれを追いかけます。この記事の案件の表は、両方を1枚で見る形になっています。
Q. 原価管理のソフトには、いつ替えればいいですか。
上の3つの合図のどれかが出たときが、考え始める目安です。どのソフトがよいかの比べは、この記事には入れていません。頼み先を4つの種類に分けた比べ表を、ITの相談先の選び方の記事に置いています。
明日やること
社長は、事務の方から、先月終わった工事1件の原価が載った請求書を、まとめて受け取ります。次に、その工事の明細1行ごとに、いつ発注したかを工事の担当者に聞き、明細の横に発注した日を書き込みます。発注した日から請求書が届いた日までが、その工事の原価が表に出てこなかった日数です。
書き込んだ日付を見ても、どこから直すかが決まらなければ、無料のご相談の30分ほどで、発注から請求書が届くまでの流れを伺い、どこで原価の数字が止まっているかを一緒に確かめます。最初に手をつける候補を1つ挙げ、なぜそこなのかも口頭でお話しします。表を作る作業や、ソフト選びは、ご相談の場ではしません。その場で契約をお勧めすることはありません。
初回は30分ほど、ビデオ通話かお電話で。資料の添付は不要です。3営業日以内にメールでご返信します。