案件管理・顧客管理はエクセルのままでいい?続けられる条件と限界の合図
共有フォルダの案件台帳が、ほかの人に開かれたままになっていて、読み取り専用でしか開けない。仕方なく自分のパソコンの写しに書き込んだら、月末には営業の方の「案件台帳_最新」と、どちらが今の台帳か分からなくなった。
エクセルをやめてソフトを探す前に、台帳の側で事務の方が確かめられるところがあります。エクセルのままでいい条件と、台帳を1つに決める手順、それでも残る限界の合図を、この記事で順に書きます。
エクセルで案件管理・顧客管理はできる?
できます。台帳を直す人が同じ時間に重ならないか、重なっても共同編集の条件を満たしていて、人によって見せる範囲を分けなくてよいなら、台帳を1つに決めれば、エクセルのままで続けられます。
台帳が直せなくなる主な原因は、台帳の置き場所と、開く人のExcelの版にあります。直せなかった人が写しに書き込むと、どれが最新か分からない台帳が増えていきます。私は、今の台帳を作り替える前に、直せるところから直します。作り替えを急がないことは、この事務所のお約束の最初に書いてあります。
だれかが開いていると直せない理由と、同時に直せる条件
何人かで同時に1つのファイルを直す使い方を、Microsoftは共同編集と呼んでいます。Microsoftのサポートページは、社内のサーバーやNASの共有フォルダのように \\server\folder の形で開く場所と、Dropbox、Box、Google Driveなどを、共同編集のできない置き場所に挙げています。共有フォルダに置いた台帳を営業の方が開いていると、あとから開いた事務の方には「ロック」の知らせが出て、事務の方は、営業の方が閉じるのを待つか、読み取り専用で見ることになります。
私が2026年9月29日に見たMicrosoftのヘルプでは、共同編集で同時に直すには、台帳をOneDriveかMicrosoft 365のSharePointに置き、台帳を開く全員が共同編集に対応した版のExcelを使う必要があります。ファイルの形式も、.xlsx・.xlsm・.xlsb のどれかに限られます。対応した版は、Microsoft 365の契約で使うExcelや、ブラウザで開くWeb版のExcelなどです。Windows版の買い切りのExcel 2021も共同編集に対応していて、法人向けのExcel LTSC 2021は対応していません(Excel 2021 for Windows の新機能)。
Excel 2016と2019も、共同編集が使えない版です。1人でもこうした版で台帳を開くと、対応した版を使っているほかの全員も、ロックで直せなくなります。どの版を使っているか分からない人がいるときは、全員がブラウザのWeb版で開くよう、Microsoftは勧めています(Excel ファイルの編集中にロックされる)。
共同編集に使える買い切りのExcel 2021も、Office 2021と同じ2026年10月13日にサポートが終わります。終わったあとに台帳がどうなるかは、Office 2021のサポート終了の記事にまとめました。
共有フォルダのまま何人かで直す方法として、「共有ブック」という古い機能もあります。私が同じ日に「エクセル 共有 同時編集」で検索すると、1位に出てきたのは、共有ブックの設定の仕方を説明する記事でした。Microsoftは、共有ブックは制限が多いとして共同編集に置き換え、共同編集を強く勧めています。共有ブックにした台帳では、表の作成や、条件付き書式・データの入力規則の追加と変更ができなくなるので(共有ブック機能について)、この記事の手順では共有ブックを使いません。
共同編集でも、営業の方と事務の方が同じセルを直すと、一般には、あとから保存されたほうの変更が残ります(例外もあるとMicrosoftは書いています)。ぶつからないように、人ごとに直す範囲かシートを決め、見出しのセルに名前を入れておくやり方を、Microsoftは挙げています(Excel ブックの共同編集を使用して同時に共同作業を行う)。
台帳を1つに決める手順
写しが1つ増えるたびに、どれが最新かを確かめる手間も1つ増えます。台帳の担当の事務の方が、次の手順で台帳を1つに決めます。前提として、社長が、台帳の置き場所と書き込み方の決まりを、事務の方に任せておきます。
1. 写しを1か所に集める
事務の方が、共有フォルダの中にある台帳の写しを1つのフォルダに集め、営業の方にも、手元のパソコンの写しをそのフォルダへ移してもらいます。集め終えたら、事務の方は写しごとに、ファイル名と更新日時を紙に書き出します。
2. 1つにまとめて、名前と置き場所を決める
事務の方は、更新日時の新しい写しから順に開き、ほかの写しにしかない行と、同じ案件の行で中身が違う欄を1つのファイルへ書き写し、どちらが正しいか分からない欄は、書いた営業の方に確かめます。書き写しが済んだら、事務の方はファイルの名前から「最新」や日付を外して「案件台帳」とします。置き場所は、共同編集が使える会社なら、会社名義で契約しているMicrosoft 365のOneDriveかSharePointです。台帳にはお客さまの名前が並ぶので、社員個人のアカウントには置きません。共同編集が使えないうちは、今の共有フォルダのままにします。まとめ終えた写しも、事務の方は消さずに、名前の頭に「写し」と付けて別のフォルダへ移します。
3. 列ごとに、直す人の名前を書く
事務の方が、台帳の見出しの上に1行足し、列ごとに直す人の名前を書きます。受注までの列は営業の方、請求と入金の列は事務の方、と名前が入っていれば、営業の方の手と事務の方の手が同じセルで重なる場面が減り、台帳を作った人がいない日でも、だれがどの列を直すかが台帳の上で分かります。
名前を書き終えた事務の方は、社長と営業の方に「書き込むのは、この置き場所の案件台帳だけ。書き終えたら閉じ、席を離れる前にも閉じる。直せないときは写しに書かず、開いている人に声をかける」と伝えます。
翌月の月末に、事務の方は、台帳が1つにまとまったかを見ます。今月の受注を確かめるとき、営業の方も事務の方も同じファイルを開けば、台帳は1つに決まっています。
案件管理・顧客管理をエクセルで行うデメリットは?
デメリットは、共同編集を使えない会社では台帳を同時に直せないことと、見せる範囲を人ごとに変えたいときは、ファイルごと分けて守る形になることです。この2つを、この記事では限界の合図と呼びます。エクセルに機能が無いという意味ではなく、台帳を1つに決める手順と今の置き方では片づかないところまで来た、という意味です。
合図1: 共同編集の条件をそろえられないまま、同じ時間に何人かで直したい
朝の同じ時間帯に、営業の方は受注を、事務の方は請求を台帳へ書き込みたいのに、台帳を会社のMicrosoft 365へ移せない、あるいはExcel 2016や2019を使う人がいる場面です。先に営業の方が台帳を開けば、事務の方は閉じてもらうまで待つことになります。待つ間にどちらかが写しへ書けば、1つに決めた台帳が、また2つに分かれます。
合図2: 人によって、見せる行や列を分けたい
パートの方には金額の列を見せずに台帳を使ってもらいたい、協力会社の方にはその会社が入る現場の行だけを見せたい、と事務の方が考える場面です。Microsoftは、開ける人を決める守りとして「ファイル レベルの保護」を挙げ、シートの保護については「セキュリティ機能を意図したものではありません」と書いています(Excel の保護とセキュリティ)。見せる相手ごとにファイルを分ければ、分けたファイルの数だけ、事務の方が中身をそろえる手間も増えます。
2つの合図のどちらかが出ていれば、台帳を1つに決める手順だけでは片づきません。
エクセル以外でおすすめのソフトは?
私自身もソフトを入れる支援をしていますが、この記事では、おすすめのソフトを挙げません。どちらの合図が出ているかで、移す先に求めることが変わるからです。合図1なら、移す先に求めるのは何人かで同時に直せることで、これは共同編集の条件がそろえば、今のエクセルでも満たせます。合図2なら、人ごとに見せる行や列を決められることを求めます。
明日やること
事務の方は明日、共有フォルダの検索欄に案件台帳の名前の一部を入れ、見つかったファイルを更新日時の新しい順に並べて、上から番号を振り、名前と一緒に紙へ書き出しておいてください。手順1のうち共有フォルダの中の書き出しを先に済ませ、手順2で開く順番まで決めておくためです。
写しを並べても1つに決めきれない、合図が出ているのか判断がつかない。そうしたときに使っていただきたいのが、無料のご相談です。台帳のファイルそのものは、お客さまの名前や連絡先が並ぶので、お預かりしない決まりです。30分ほどで台帳の前後の仕事の動きをお聞きし、その中で最初に直すところの候補を、なぜそう考えるかも添えて、口頭でお返しします。社内で解ける内容だと分かれば、そう申し上げます。その場で契約をお勧めすることはありません。
初回は30分ほど、ビデオ通話かお電話で。資料の添付は不要です。3営業日以内にメールでご返信します。